私は30代後半の、働く主婦です。
子供も二人いて、それなりに忙しい毎日を送っていました。
13年前に結婚してから、夫とはたまに喧嘩しながらも、子育ては最優先という感じで大きな別れ話などもなくやってきました。
ですが、私の心の中では、女として満たされない思いがずっとありました。
そんな気持ちを夫に満たしてもらうのは無理な話ですし、夫とは男と女というよりも家族という感じでしか見れないというのもありました。
そんなある日、ふとスマホをいじっているとマッチングアプリというものを見つけ、試しに登録してみることにしました。
もちろん、登録するときは、大丈夫かな?危険はないかな?人にバレたりしないかな?と心配はありました。ですが、よく考えてみると、別にこちらの個人情報を入力するわけでもありません。それよりも私はとにかく誰か夫以外の知らない男性と繋がりたいという思いが先行していました。
きっと、世の中の女性も、結婚してるのか結婚してないのかに関係なく、誰か男性とメールでもいいからお話してみたいと思っているのではないでしょうか?
実際に登録してみて、とても驚いたことがあります。それは登録した翌日にはたくさんのレスポンスがあったことです。レスポンスをくれたのは、下は20代前半から、上は50代後半の男性達でした。
しかし、年齢についてはサバを読むことも出来るみたいなので、実際には、50代男性というのは、もっと上の年齢の人もいたと思います。男性も女性と一緒で、若く見られたいという感情があるのかもしれませんね。
なぜ、年齢のサバを気にしたかというと、実際にお会いした男性が年齢を詐称していそうだったからです。
今回は、その時の男性とのお話をさせていただきます。
私が登録したマッチングアプリには、おでかけ機能というものがついていました。
おでかけ機能とは、例えば、私が何月何日にここに行くので、一緒に行きませんか?と登録すると、その予定に興味を持った人が連絡をしてくれるというものです。
マッチングアプリを始めてみましたが、これまで出会い系未経験だった私にとっては、アプリを利用することは本当に危険はないのかととても不安でした。
もちろん、男性と繋がりたい、出会いたいと思うものの、家庭を壊す気は全くなかったので、安全面には特別に気を遣っていました。
ですので、いきなりホテルに行こうとか、品のない下ネタばかり送ってくる男性も沢山いましたが、そのような男性達は全て敬遠していました。
私は今年の夏、当時公開されていた映画を観に行きたいと思っていました。そこで、おでかけ機能に映画を見に行きたいことを書いていました。すると、ある男性が日時と時間と場所を指定して、お誘いしてきましたので、その提案を受けることにしました。
その男性は既婚者で、私が住んでいるT市から高速を使って30分ほどのところに住んでいる方でした。年齢は39歳で、趣味はテニスで学生の頃から続けているとのことでした。
私も中学高校とテニスをしていたので、共通点があるなと思いました。また、私が観たいと思っていた映画を、彼も観たい言っていたので、それでは一緒に行きましょうということになりました。
待ち合わせは映画館のロビーで会いましょうと約束しました。
映画当日はかなり緊張しましたし、それらしき方がいたら、先に見ておきたいと思って、ロビーの前を行ったり来たりしていました。
しかし、それらしき男性はなかなか現れず、少し不安になってきていたのですが、無事に男性が現われました。
本当は、待ち合わせ場所を遠くから見て、先に男性のことを確かめてから会いたいと思っていたのですが、ロビーの前をきょろきょろしている間に男性から声をかけられることになってしまいました。
「さちさんですか?」と聞かれ、私は緊張した顔で「はい」と答えました。
男性は、眼鏡をかけていて、スーツ姿でした。待ち合わせの時間が19時ということもあり、彼は仕事帰りだったようです。
ちなみに私は、ホワイトカラーの男性が好みです。制服姿より、作業服より、白いカッターシャツに背広姿の男性が好きなんです。
マッチングアプリで映画の約束をした時に、彼は多分スーツで行くことになると思いますと言っていましたが、改めて、男性のスーツ姿は素敵だなあと実感しました。
しかし、違和感がありました。それは、マッチングアプリでやりとりしていた時は、彼の年齢は39歳という話でしたが、実際に彼に会ってみると、どう考えても、39歳には見えないな~という印象でした。
恐らく、45歳は過ぎているんじゃないかなという印象でした。
彼は肌が浅黒く日焼けしていましたので、テニスをしているのは嘘ではないようですが、どうも年齢には偽りありがあるようです。
私は女性が年齢をサバ読みするように、男性も歳を若く言ってしまうんだなあと思いました。実際、顔を見れば、年齢が45だとしても50だとしても歳なんて分かるのにと思いましたが、その話は置いておくことにします。
「待ちましたか?」
彼からそう言われて、私は「少しだけです。大丈夫です」と答えました。
平日の夜の7時でしたので、他の客はあまりいませんでしたし、自宅から1時間ほどの映画館を選んだので、知り合いに会う可能性は低いかなと思いました。
挨拶もそこそこに、中に入りましょうかということになりました。
彼はまだチケットを購入していませんでしたが、私は既に購入済みでしたので、彼は私の分の飲み物も合わせて購入してくれました。
中に入り席に座ると、ちょうど予告が始まったところでした。
彼は、「映画お好きだって言われてましたね」とか、「この映画館初めて来ました」など、私に小声で話しかけてきました。
私は適当に相槌を打ちつつ、彼の横顔を観察していました。
顔はまずまず、話し方も、敬語で話してくれるし、馴れ馴れしさもありませんでした。
出会い系でありがちな、とにかく目的はエッチだけみたいな、ガツガツした感じも彼からは感じとれませんでした。
年齢のサバは読んでるけどね…と心の中で思いつつ、全体として好感の持てる雰囲気の方でした。
そして映画の本編が始まり言葉が途切れました。
映画の途中で、左手の指に何か触れたような気がして視線を向けると、かすかに彼の手が動いていました。
「手を握ってもいいですか?」
彼に聞かれて、私は「はい」と答えました。
手を優しく包み込むように握られて、私は自分の心が熱くなるのを感じました。熱くなっているのは心だけではなかったかもしれません。(笑)
握った手はそのままの状態で、話をすることもなく、映画は続きました。
それ以上のことが・・・
もしかして、こんな映画館の中で起きてしまうのかしら・・・
これが出会い系というものなのかしら・・・
なんて、私はドキドキしていましたが、彼の手は動かず、ただ私の左手を包んでいました。
映画も終盤に近付き、私は映画に見入っていましたが、ふと視線に気づき、彼を見ました。
彼はにこっと笑い、私もにこっと笑いました。
そして、顔が近づいてきて、チュッと小鳥のようなキスをされました。
瞬間、すぐ後ろの席に人がいなかったかなと少し気になりましたが、人はいませんでした。
良かった…と思ったら、また、今度は顎を軽く持たれてキスをされました。
また小鳥のような軽いキスでした。
私も彼も何も言いません。
10分も経ったでしょうか。
彼の顔がまた近くに迫ってきて、私は目を閉じました。
さっきまでのキスは小鳥キスとは違い、今度のキスは肉食獣が獲物を食らうような熱いキスでした。
私は、久しぶりの熱い長いキスに身をゆだねてしまいました。
キスの間、彼の両手は私の両手を優しく握っていました。
唇が離れると、私は我に返り、
「ここ、映画館・・・」
「これ以上はさすがに無理・・・」
「人に見られたら不倫だとか思われるのかな・・・」
とか、考えていました。
でも、彼はそれ以上の行動に出ることはなく、映画館の中ではキスだけで終わりました。
多分ですが、もしそれ以上のことを彼が私にしてきていたら、私はひいてしまっていたと思います。
結婚していて、夫以外の男性と隠れて会うのですから、求めるのは当然刺激だけではありません。
でも、男性は、出会い系を利用しようとする女性が求めているのは非日常の刺激だと勘違いして、多少強引にでも攻めてしまった方が良いと思っている人が多いような気がします。
でも、秘密が守られて、安心があるからこそ、出会いを楽しめるのだと私は思います。
映画館を出ると、お互い車で来ていたので、駐車場に停めた彼の車の助手席に乗り込みました。
彼の車は高級ファミリーカーでした。
車は駐車場の端に停めてあり、きっと、わざと人目につかない場所を選んで停めたのだろうと推測できました。
彼の車はとてもいい香りがしました。
「煙草吸わないんですか?」と聞くと、「ずいぶん前に止めたんですよ。でもそのせいで少し太りました」とのこと。
しばらく話をしていましたが、話が途切れたところで、映画館でしたキスより激しいキスをされました。
そして、彼の手は私の膝の上に置かれ、フレアーのスカートをまくり上げました。
私は足を広げようとしたのですが、ここが車の中であったことを思い出し、「すみません。ここではできないです」と言いました。
話し方も見た目も好感が持てたので、そこでは連絡先を交換して、1時間ほどで別れました。
初めて会った日から、1週間後にまた再会しましたが、その時はホテルでしっかりセックスしました。
しっかりというのもおかしい話ですが、初めて会った時にキスだけで終わらせてくれたからこそ、次に会った時にとても素敵な時間を過ごせたんだと思います。
彼とは、今でも1週間に1回くらいの割合で会っていますが、映画だけ観てさよならするときもあります。それがかえって体だけの関係ではないと思えてとても嬉しいのです。